2010年09月14日

Posted by keichen
at 09:00
Comments(5)

ウィーン

La Bohème

新しい体制のもと、今シーズンのウィーン国立
歌劇場が幕を開けています。
先日は、小澤音楽監督からバトンを引き継いだ
ヴァルザー=メスト監督指揮の「ラ・ボエーム」を
観劇しました。

せっかくなので(?)、カフェコンサートなどで
お話しした、桟敷立見席の様子などもお伝えしますね。
ラ・ボエーム当日は、新監督の指揮ということもあって
早めに立見席券のための列に並びました。19:30開演で
僕は17:30にオペラ座へ。

La Bohème
この日は立見席の列は意外と多くなかったです。
右奥が立見席専用のチケット売り場


立見席チケットは、平土間・パルテッレ、バルコン、
天井桟敷・ガラリー、の3つの階に分かれて売られます。
合わせて500席余り(!)の立見席があります。

チケットをゲットしたら、またそれぞれの階の列に
並びます。
La Bohème
↑天井桟敷の立見席への列。
いわゆる常連さんが多い階です。

ウィーン国立歌劇場は馬蹄型の劇場です。
舞台からは完全に側面になってしまう席もありますが、
オーケストラピットがよく見えて、僕にはそこの方が
おもしろいので、立見席に行く時はよく側面の席に
陣取ります。

La Bohème
立見席のみ開場された時点の、空に近い劇場。
馬蹄型、というのがイメージできるでしょうか。
画像下に見える人々は、平土間立見席に陣取る
人々。


La Bohème
天井桟敷はこんな雰囲気。
La Bohème


Ensemble Klingel のコンサートでも、ファゴットの
蛯澤亮君が話していましたが、彼の師匠は開演ギリギリ
にオケピットに入ります。笑
ちょうどこの日は彼の師匠が首席ファゴットでした。
オケメンバーはほぼ揃っていますが、ファゴット首席
とホルンメンバーの席がまだ空席です。
開演1分前に、亮君師匠、余裕の登場。笑
La Bohème


休憩ではカフェテリアでコーヒーやワインなどと、
歓談を楽しみます。
La Bohème
La Bohème
天井桟敷より上の階にある、カフェテリア。
下の階には、もっと広くゴージャスなカフェも
あります。笑 今度レポートしますね。


さて、新監督のもと新たに音楽的なリハーサルを
重ねての上演となった「ラ・ボエーム」。第一幕は
どことなく歌手とオケがしっくりこない感じがあったり
もしましたが、幕が進むごとに快活さ(第二幕)や
熱さが増し、素晴らしい公演だったと思いました。
メスト監督は派手さではなく、長いオペラを堅実に
構成していくなかで、うまくドラマを引き出し、
それを見せて行くことに長けているのかな、という
感想を持ちました。

第三幕の別れのシーンで、そのドラマチックな構成の
手法が見られたと思いましたし、その昂りを持って
終幕が続き、命の灯が燃え尽きようとしているミミと
それを見守るしか術の無いロドルフォが、二人の出会い
の思い出を語るシーンでは、会場中が静まり返り、
固唾をのんで二人を見守る、とでも言うような雰囲気に
なったのには、あらためて音楽の力のすごさを感じました。

ボエームは大好きなオペラで、これまでにもう何度も
観ていますが、ここ最近は観るたびに僕の中でのクライ
マックスのポイントが変わります。
先日は、あらためてテクストと音楽の関係に着目して
聴いていました。
第四幕、瀕死のミミがロドルフォたち、ボヘミアンが
暮らすアパートに担ぎ込まれて来るシーン。
ミミを連れて来たムゼッタが「彼のもとで最期をー」
とミミがうなされながら言っていた、と伝えます。
ミミは自分の命がもう本当に尽きそうだと知りながら
「この部屋に来て今、私は新しく生まれた、という
気がしているの」と語ります。
その場面の憧れと光りに満ちた音楽。
愛し合う二人の語らいを見守る仲間たちは、けれど
「ここには、気付けの酒もコーヒーも、何も無い」
と落胆します。
純粋に愛し合う二人と、どうしようもない現実。
この対比がこの日、ボエームは青春を描いたオペラだと
思っていた僕にはとても強烈に感じられました。

ヴェリズモオペラ、とプッチーニの作品が呼ばれる
のも、「トスカ」や「蝶々夫人」では納得していま
したが、ああ、ボエームも青春だけじゃないよな、
と思い直しました。これは、指揮者の光と影の対照を
前に出して来るような音楽のつくりかたにも影響されて
いたように思います。冷静で、あまり感情を表に出し
たり、奇をてらうことをするタイプではないのかな、
と思っていたメスト新監督の手堅い音楽の進め方と、
しかし的を得た効果と会場の反応を導き出していた
ことに、深く感心した夜でした。

La Bohème



夜のオペラ座。桟敷席階のテラスから。
La Bohème



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この記事へのコメント

きれいな写真をたくさん届けてくださって
ありがとうございます。
このシリーズは見ているとその席に
座ってみたくなりますね。

夜のオペラ座外観も美しいです。

そして特に
憧れと光に満ちた音楽
というところを読んだ後、なぜか
もう一度カンタータに向かってしまい
ちょっとのぞいてきました。

やさしいお母さまでしたー。


伝えてもらったことや、感じたことを
大切にしていきたいと思います。

Posted by S at 2010年09月29日 01:29

今日、ある小ホールに行ってみることがあり
中で少し似た感じのカフェテリアに出会いました
(写真を載せられないのが残念です。。)。

何気なくコーヒーを飲んでいたのですが
休憩時間に音楽について語り合う人々を眺めていると
ついフエフキにっきのことを思い出してしまい
ちょっと久しぶりにページを開かせてもらいました(゜▽゜)

Posted by S at 2010年10月22日 23:43

>S 様

書込みありがとうございます。
返信遅くなってしまいました。すみません。

珈琲カンタータ、行かれたのですね。
お母さん、僕も行く時はいつもカウンターで
いろいろ話を聞いていただいています。笑

そして、東京にもウィーンのオペラ座のような
カフェテリアあるんですねー。
どこのホールだろう??笑

勢い込んでレポートした後は、ぽしゃって
しまい、なかなか更新出来ず、、です。
気負わず行くのが、性に合ってるのかなと
思いました。
たまにのぞいてみてくださいね。

Posted by トグチ at 2010年10月25日 16:27

お返事うれしく読みました。

やりたいことなどたくさん抱えていらっしゃる中
お心遣いありがとうございます。

時々、自由に?書かせていただきますが
特に回数が重なった時などは気にしすぎず
どんどん先に進んでくださいねぇ。


フランスにちょこちょこ行くのですが
(あ、でも、シテ島のベンチには
 気がついてませんでした…)
オーストリアは全く未知の世界です。

オペラ
という名前のケーキは作ったりしますが:)
実際はどれを観たらいいのか決められずにいました:(

最近は
渡久地さんの大好きな、というこの作品はもちろん
圭さんの曲を聴いているうちに他に2つも
観たいものができてしまいましたっ。

どうすればその席にたどりつけるか
いつか相談できる日が来るといいなぁ
と思ってみたりしてます。

Posted by S at 2010年11月02日 23:43

S様

オペラ、という名前のケーキはたしか食べた
ことがありますが、あれを作るのはなかなか
大変なのではないでしょうか。すごい!
そう、たしかパリのどっかで食べました。笑

フランス、行かれるのですね。
機会があったら是非シテ島の広場行ってみて
ください。ポンヌフからすぐです。
オーストリアも雰囲気はまたがらっと変わり
ますが、いいところですよー!

Posted by トグチ at 2010年11月13日 10:22
 
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